アスベストの除去・解体は、法律で定められた手順に従って実施されます。とはいえ、「いきなり除去作業が始まるの?」「危険レベルが違っても作業手順は同じ?」と、解体手順に関する疑問がある方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、アスベストの除去工事の手順を解体のプロである「株式会社上池解体興業」がわかりやすく解説!
危険レベル別の除去方法や費用相場、注意点についても紹介します。
アスベスト解体工事の全体手順
アスベスト解体工事の全体手順は、以下のように大きく7つに分けられます。
ここからはそれぞれの工程で業者が行うことを具体的に解説していきます。
- 1.事前調査
- 2.届出手続き
- 3.工事前の準備作業
- 4.アスベスト除去工事
- 5.仕上げ工事
- 6.廃棄物処理
- 7.記録・報告
事前調査
アスベストの解体工事前には、アスベストの含有を調べるために専門の調査員による「事前調査」が実施されます。
アスベスト調査では、建物の設計図書に基づいた「書面調査」と目視による「現地調査」が行われます。そして現地調査でサンプリングされた検体に対してアスベストの含有率を分析。ひと通り調査が終われば、解体工事が進められます。
届出手続き
アスベストを解体する際には、事前に行う「届出手続き」がいくつかあります。
以下の表にて各種届出をまとめましたので、参考としてご覧ください。
届出名 | 届出内容 | 期日 |
特定粉じん排出等作業届書 | 解体工事で、特定粉じん排出等作業を実施する場合に必要な届出 | 工事開始日の14日前まで |
建築物解体等作業届 | 建築物の解体に伴い、アスベストの封じ込め・囲い込み作業などを実施する場合に必要な届出 | 工事開始前まで |
事前届出 | 吹付け石綿の有無や除去措置に関して記載する届出書 | 工事開始日の7日前まで |
工事計画届出 | 延べ床面積80㎡以上の建築物の解体を実施する場合に必要な届出 | 工事開始日の14日前まで |
上記の届出手続きのうち、「特定粉じん排出等作業届書」と「事前届出」は「発注者である施主」が提出の義務者です。
なお作成および提出手続きは業者に委任することができるため、特にアスベスト解体工事が初めての方はプロにお任せすると良いでしょう。
工事前の準備作業
アスベスト工事がスムーズに進められるように、「工事前の準備作業」も行います。例えば、近隣住民への挨拶回りやアスベスト関連の看板・掲示物の設置、立ち入り禁止措置などが挙げられます。
また工事内容や状況に応じて、アスベスト除去作業中の粉じん飛沫を防ぐために「プラスチック製の養生シート」が建物全体に被せられます。
アスベスト除去工事
届出提出と準備作業が完了すれば、いよいよ「アスベストの除去工事」が開始されます。
アスベスト除去作業の流れは、一般的に以下の流れで進みます。
- 1.処理作業場や更衣室などの隔離
- 2.負圧・除塵設備の設置
- 3.石綿粉じん濃度測定
- 4.粉じん飛散抑制剤等による作業場の湿潤化
- 5.専用の工法によりアスベストを撤去する
- 6.残留アスベストの除去
- 7.取り残し等の目視確認
- 8.除去箇所に粉じん飛散防止処理剤を散布
上記の工程は「労働安全衛生法」や「大気汚染防止法」などのアスベスト関連の法令で定められている措置で、アスベストの種類や建材によって不要な工程もあります。
仕上げ工事
アスベストの除去作業が完了すれば、「仕上げ工事」を実施します。
仕上げ工事では「清掃」を中心に、仮設物の撤去作業や隔離養生の取り外しなどの「片付け」が行われます。
廃棄物処理
除去作業を通じて排出されたアスベストは、「廃棄物として処理」されます。すべてのアスベストが同じ方法で処理されるのではなく、「飛散性アスベスト廃棄物」と「非飛散性アスベスト廃棄物」の2種類に分別され処理が行われます。
簡単にそれぞれの処理方法を以下の表にてまとめましたので、参考としてご覧ください。
廃棄物の種類 | 概要 | 処分方法 |
飛散性アスベスト廃棄物 | ・吹付けアスベスト・石綿保温材などの飛散する可能性が高いアスベストを含む廃棄物
・特別管理産業廃棄物に該当 |
中間処理場に運搬後、溶融処理・無害化処理を経て最終処分場で埋立処分される |
非飛散性アスベスト廃棄物 | ・アスベスト含有建材が撤去され廃棄物となったもの
・板状に固められており、飛散しにくい ・飛散性アスベスト以外を非飛散性とするのが一般的 |
最終処分場へ直接運搬後、埋立処分される |
またアスベスト含有廃棄物の収集運搬には、「特別管理産業廃棄物収集運搬業」または「産業廃棄物収集運搬業」の許可が必要です。そのため解体業者にアスベストの処理を依頼する際には、それぞれの資格を有する業者かどうかを確かめておきましょう。
記録・報告
解体工事の終了後には、アスベストの解体工事が適切に行われたかどうか証明する「記録」作業があります。主な記録内容は以下の通りです。
- ・解体工事実施期間や場所
- ・作業計画に基づいた「適切な飛散・ばく露防止措置」がとられていたかどうか
- ・アスベストの取り残しの有無
- ・破片の飛散や堆積粉じんの有無
最後に解体工事の内容を「書面上で発注者に報告」し、すべての工程が終了となります。記録内容書類および発注者への報告書類は、「工事終了後3年間」の保存管理義務が業者に課されています。
【レベル別】アスベスト解体方法の違い
アスベストの除去工事の手順は、「アスベストの危険レベル」によって異なります。
こちらでは「アスベストレベル1〜3における解体方法の違い」について紹介します。
またアスベストレベルをご存じでない方向けに、「アスベストレベルの違いによる危険性の違い」についても解説するので、参考にしてみてください。
そもそもアスベストレベルによる危険性の違いとは
アスベストは繊維状鉱物の総称で、それぞれが持つ「発じん性の危険度」によって3つのレベルに分類されます。「発じん性」とは「粉じんの飛散しやすさ」と同じ意味です。飛散して人が呼吸して吸い込むと健康被害の原因となる可能性が高いため、アスベストの性質のなかでも「飛散性」を主な基準として分けられています。
以下の表にて「レベル1〜3ごとの発じん性や危険性」についてまとめましたので、確認してみてください。
アスベストレベル | 具体例 | 発じん性 | 危険性 |
レベル1 | ・吹付け石綿
・石綿含有吹付けロックウール |
著しく高い | ・作業には「高濃度の粉じん量を防げる防じんマスク・保護メガネ」の着用が必要
・もっとも厳重なばく露防止対策が求められる |
レベル2 | ・断熱材
・保温材 ・耐火被覆材 |
高い | 発じん性が高い製品や除去作業では、レベル1相当の対策が必要 |
レベル3 | 石綿含有成形板 | 比較的低い | ・日常生活ではほぼ飛散することはなく、飛散性は低い
・破砕や切断などの作業では、レベル1相当の対策が必要 |
レベル2や3の場合にも、飛散する可能性が高くなる作業ではレベル1と同様に厳重なばく露防止対策が必要とされます。
アスベストレベル1の解体方法
アスベストレベルのなかでは最も危険度が高い「レベル1」の主な解体方法は、以下の通りです。
解体工法 | 工法説明 |
掻き落とし | ワイヤブラシやヘラ、ケレン棒などを使用して、手作業で吹き付け材の下地から取り除く手法 |
封じ込め | 薬剤や造膜材によりアスベスト吹き付け材の表層部や全体を固着させ、封じ込める手法 |
囲い込み | アスベストの露出部分に対して板状の非アスベスト材を取り付けることで、完全に覆う手法 |
グローブバック | 長手袋と養生シートが一体となった「グローブバッグ」で除去部分周辺を密閉し、バッグ内で剥離する手法 |
レベル1の解体は「掻き落とし」による解体が大半です。
現地調査や分析結果、マニュアルに基づいて適切な工法が選ばれます。
アスベストレベル2の解体方法
「アスベストレベル2」の解体方法は、レベル1と同じ「掻き落とし・封じ込め・囲い込み・グローブバック」に加え、「原形のまま取り外す方法」が一般的です。
原形状態を保ったまま取り外す際には、建材が固定されている釘やネジなどを取り除き、手で一つずつバラしていきます。
アスベストレベル3の解体方法
もっとも危険レベルが低い「レベル3」の解体は、主に「手作業で原形のまま取り外す方法」で行います。
ただしレベル3であっても、手作業での除去が困難と判断される場合には、レベル1・2と同じ工法で行われます。
アスベストの解体費用相場
アスベストの解体費用は、アスベストが含まれる部分の処理面積や構造によって決まります。以下の表にて「アスベストレベル別の解体費用相場」をまとめましたので、参考にしてみてくださいね。
アスベストレベル | 解体費用相場 |
レベル1 | 15,000~85,000円/1㎡ |
レベル2 | 10,000~60,000円/1㎡ |
レベル3 | 3,000円/1㎡ |
アスベストレベルが高いと解体難易度も上がるため、費用も高くなります。また解体業者によっても大きく変わるため、なるべくコストを抑えたい方は見積もりの際に相談すると良いでしょう。
アスベスト解体工事を手順通り進めるための注意点5つ
アスベスト解体工事を手順通りに進めるうえで、施主側が注意すべきことがあります。
こちらでは「アスベスト解体工事を手順通り進めるための注意点」5つを紹介します。
アスベスト解体工事に関連するトラブルを避けるためにも、事前に確認しておきましょう。
- ・分離発注にする
- ・アスベストの解体は早めに依頼する
- ・業者からの依頼には滞りなく対応する
- ・施工前に近隣住民への挨拶をする
- ・法規制に違反する業者の場合は消費者センターに相談
1.分離発注にする
建て替えの際には「分離発注形式」で依頼しましょう。
分離発注とは、新築建設は「工務店」に依頼し、アスベストを含む解体は「解体業者」に依頼するように、それぞれのプロに専門分野を任せる依頼方法です。
もちろん、ハウスメーカーや不動産会社など、他業者にも解体工事の依頼は可能です。とはいえ、解体専門でない会社はアスベストの扱いに詳しくなく、正しくない手順で実施する可能性があります。また工務店に依頼してしまうと、下請けの解体業者とコミュニケーションを取る機会がなく、希望しない工法で進められてしまう可能性も。
一方でアスベストの解体も扱う解体業者であれば、アスベストの扱いに慣れているため、適切な作業方法で解体できます。
そのため無駄なトラブルを避けるうえでも、解体のことは解体業者に、新築工事のことは工務店に任せることをおすすめします。
2.アスベストの解体は早めに依頼する
屋根材や外壁などの家屋の一部に対する小規模なアスベスト解体工事であっても、事前調査から解体完了までに「1〜2ヵ月程度」かかるケースも。
そのためアスベストの解体は、早めに依頼するようにしましょう。
3.業者からの依頼には滞りなく対応する
業者からの依頼には、滞りなく対応することが施主に義務付けられています。
業者からの依頼には、「建築物の設計図面提示」や「解体費用の支払い」などがあります。
業者の法に基づく施工作業や手順を妨げた場合には、罰則が課される場合もあるため注意してください。
4.施工前に近隣住民への挨拶をする
アスベスト解体にともない、粉じんや騒音などが原因で近隣住民からクレームが発生する可能性があります。クレーム対応により、手順変更や工法変更が発生するケースも少なくありません。
そのためアスベストの工事施工前には、施主自ら近隣住民へ挨拶するのも、スムーズに解体工事を進めるうえで重要なポイントです。挨拶時には、「業者の飛散防止対策は十分だが迷惑をかける可能性がある」旨を伝えると良いでしょう。
5.法規制に違反する業者の場合は消費者センターに相談
アスベストの解体工事は、アスベスト関連の法令で定められた方法で行わなければなりません。とはいえ、業者のなかには「アスベスト廃棄物を不法投棄する」「立ち入り禁止措置をしない」など、法規制に違反する方法で行ってしまう業者も。
処理方法や処分方法に違反があれば、把握していなかったとしても「発注者である施主」の責任が問われる可能性もあり注意が必要です。そのため違反業者や悪徳業者とわかった場合には、速やかに消費者センターへ相談してください。
アスベストの悩みはまず解体業者へ相談
家屋解体工事に伴うアスベストの悩みは、まず解体業者に相談することをおすすめします。理由は解体業者であれば、アスベストに関連する施主の義務や必要な手続き、費用を安くできる工法など、施主の疑問や質問に対して丁寧に説明できるからです。
ただし解体業者のなかにはアスベストの解体を扱っていない業者もあるため、業者のホームページを参考にアスベストに対応している業者を選んで相談すると良いでしょう。
まとめ
アスベストの解体手順には事前調査やアスベストの除去工事、廃棄物処理を含め、7つの工程があります。
すべての作業工程はアスベスト関連の法律でこまかく定められており、非常に複雑です。とはいえ法律に違反する内容があった場合には、施工した業者だけでなく施主側の責任も問われる可能性も。
そのためアスベスト関連の罰則やトラブルを避けたい方は、「工務店やリフォーム会社」など解体のプロではない業者に依頼するのではなく、解体に関する豊富な知識を有する「解体業者」がおすすめです。
東京都目黒区の株式会社上池解体興業(BOCCOS/ボッコス)では、解体工事をフルサポートしております。東京都内を中心に関東地域において「木造家屋・ビル・空き家」などの解体工事を承っており、難しい解体工事の実績も豊富です。また当社では丁寧なヒアリングを心掛けておりますので、初めての方でも安心してご利用いただけます。お見積もりは無料ですので、当社サイトからお気軽にお問い合わせください。