産業廃棄物は、事業者から出たゴミのうち法令によって適正な処理が求められている廃棄物のことです。たとえば、廃油や金属くず、がれき類などがあげられます。これら産業廃棄物の処分・処理には基本的に費用負担が生じ、会計処理上、適切な勘定科目を設定する必要があるのです。
本記事では、解体工事などで出た産業廃棄物処分費用の勘定科目について、解体工事のプロである「株式会社上池解体興業(ボッコス/BOCCOS)」が詳しく解説します。記事後半では、20種類の産業廃棄物一覧表や解体工事におけるそのほかの費用の勘定科目についても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
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産業廃棄物処分費の仕訳に利用できる勘定科目6選
産業廃棄物の処分費用をどの勘定科目で仕訳すべきかは、処分費用の金額や処分の頻度、また処分を誰がおこなうのかなどによって異なります。そのなかでも産業廃棄物の勘定科目としてとくに利用頻度が高いとされるのが次の6つです。
どの勘定科目をどのようなシーンで選ぶべきか、順に見ていきましょう。
「支払手数料」として仕訳する場合
産業廃棄物の勘定科目として登場機会が多いのが「支払手数料」と「雑費」です。一般的に、産業廃棄物を処分する機会はそう多くないでしょう。日頃から産業廃棄物を取り扱う事業をおこなっていれば話は別ですが、会社の引っ越しや年に一度の大掃除など限られたシーンでのみ、産業廃棄物処分の必要が生じるというケースが一般的です。そのような単発的な産業廃棄物処分における費用は、「支払手数料」や「雑費」として仕訳をするのがおすすめです。
とくに、一般ゴミの回収を依頼している業者に産業廃棄物の処分をお願いした場合の処分手数料や、地域の粗大ゴミ券の購入費用などが「支払手数料」に該当します。
例:会社移転の際にいくつか産業廃棄物が見つかった。普段ゴミの回収をお願いしている◯◯社に手数料3万円を普通預金から支払って引き取ってもらった。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
支払手数料 | 30,000円 | 普通預金 | 30,000円 | 産業廃棄物 ◯◯社 |
「雑費」として仕訳する場合
支払手数料で仕訳する場合と同様、一時的に産業廃棄物を処分する必要が生じた際には、「雑費」として仕訳をおこなうことも可能です。とくに、処分費用が少額で会計上の重要度もそれほど高くないような場合は、個別に勘定科目を設定するのではなく「雑費」としてそのほかの経費とまとめて仕訳をおこなうほうがスムーズといえるでしょう。
勘定科目で使われる「雑費」とは?
雑費とは事業上の少額の費用で、ほかの経費にあてはまらないような経費によく使われる勘定科目です。雑費として仕訳をおこなう前に、一度ほかにあてはまる勘定科目がないかどうかチェックしてみると良いでしょう。
例:会社の大掃除の際に出てきたごく少量の産業廃棄物の処分を1万円で〇〇社に委託し普通預金で支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
雑費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 | 産業廃棄物 ◯◯社 |
「外注費」として仕訳する場合
産業廃棄物の処分費用を「外注費(業務委託費)」として仕訳をおこなうケースもよくあります。外注費とは、外部の企業や個人事業主に業務の一部を委託する際に発生する費用です。外注費は「業務委託費」とも呼ばれ、外部の事業者に業務を依頼し、その支払った報酬に該当する勘定科目です。産業廃棄物処分のシーンでは、外部の専門業者に処分を委託する場合で、その金額が比較的大きいときは「外注費」として扱うのがおすすめです。ただし、日常的に産業廃棄物の処分を依頼するようなケースでは、次の「売上原価」として計上できる場合もあります。
例:店舗リニューアルの補助業務をする際に発生した産業廃棄物の処分を、業務委託先である〇〇社に10万円で依頼し普通預金で支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
外注費 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 産業廃棄物 ◯◯社 |
「売上原価」として仕訳する場合
産業廃棄物を処分する機会が多く、日常的に処分費を支払っているような場合は、「売上原価」として仕訳できます。売上原価とは、売上を生み出すためにかかった費用のことで、材料費や製造ラインの人件費、工場の電気代などが該当します。事業として売上の発生のために定常的に産業廃棄物処分が必要となるのであれば、この「売上原価」として仕訳するのが妥当でしょう。
例:作業時に発生する産業廃棄物の処分を〇〇社に月15万円で依頼し普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
売上原価 | 150,000円 | 普通預金 | 150,000円 | 産業廃棄物 ◯◯社 |
「衛生費」として仕訳する場合
産業廃棄物の処分費を清掃・掃除にかかった費用に含めて計上したい場合は、「衛生費(清掃費)」として仕訳することも可能です。ただし利用頻度は低めで、ほかの費用の仕訳で衛生費を勘定科目としてすでに利用している場合など、限定されたシーンでの使用がおすすめです。
「修繕費」として仕訳する場合
設備の修繕などにかかった費用とあわせて計上したい場合は、「修繕費(設備維持費)」としても問題ありません。ただし、「衛生費」と同様にこちらも利用頻度は低めです。自然災害や老朽化が原因で事業所の大規模な修繕をしなければならないような場合に、設備の修理費や内装の原状回復にかかる費用とともに産業廃棄物の処分費を計上したい、といった限定的なケースでのみの利用となるでしょう。
どの勘定科目を使うかはケースバイケース
産業廃棄物の処分費をどの勘定科目で仕訳すべきかは、処分の頻度や金額、どのような理由で処分しているのかなどによって異なります。一般的に利用頻度が高いのは「支払手数料」「雑費」「外注費」となりますが、売上を発生させるために定常的に産業廃棄物を処分しているようなケースでは「売上原価」としての仕訳も可能です。また、事業所の清掃や大規模修繕にともなう処分であれば「衛生費」や「修繕費」として仕訳したほうが良い場合もあるでしょう。
産業廃棄物とは
産業廃棄物とは、事業活動にともなって発生するゴミのうち、法令によって適正な処理が求められている20種類の廃棄物のことです。たとえば、焼却炉に残った灰などの燃え殻やエンジンオイルなどの廃油、解体工事で発生したがれきおよびコンクリートなどは産業廃棄物として扱われます。産業廃棄物の処分には一般ゴミと異なる処理方法を用いるため、その処分には相応の費用負担が生じます。そのため、産業廃棄物の不法投棄をおこなう業者があとを絶たず、環境省の取りまとめによると、令和4年度に新たに判明した不法投棄件数は134件、不法投棄量は4.9万トンにのぼるのです。なお、産業廃棄物を不法投棄した場合、5年以下の懲役または1千万円以下の罰金(法人においては3億円以下の罰金)もしくはその両方が科せられます。
出典:産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)について | 報道発表資料 | 環境省
産業廃棄物マニフェスト
産業廃棄物の処分をする場合、排出事業者は委託業者へ産業廃棄物を引き渡す際にマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付しなければなりません。産業廃棄物マニフェストとは、産業廃棄物の不法投棄を未然に防止するために1993年に義務化された仕組みです。マニフェストは、産業廃棄物の処理がどの事業者からどの事業者に委託され、どのような処分がされたのかなどを追跡する上で重要な役割を担います。もし、排出事業者がマニフェストを交付せず産業廃棄物の処分を委託したり、マニフェストに虚偽の内容を記載したりしてしまった場合、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)違反とみなされ、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
産業廃棄物一覧
産業廃棄物には、具体的に廃棄物処理法で定められた6種類(燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類)と政令で定めた14種類の計20種類が定められています。
- 1. 燃え殻
- 2. 汚泥
- 3. 廃油
- 4. 廃酸
- 5. 廃アルカリ
- 6. 廃プラスチック類
- 7. ゴムくず
- 8. 金属くず
- 9. ガラス・コンクリート・陶磁器くず
- 10. 鉱さい
- 11. がれき類
- 12. ばいじん
- 13. 紙くず
- 14. 木くず
- 15. 繊維くず
- 16. 動物系固形不要物
- 17. 動植物性残さ
- 18. 動物のふん尿
- 19. 動物の死体
- 20. 汚泥のコンクリート固形化物など、1~19の産業廃棄物を処分するために処理したもので、1~19に該当しないもの
産業廃棄物の処分方法
産業廃棄物の処分は、基本的に産業廃棄物の収集運搬および処分の許可を得た専門業者へ委託する必要があります。なお、産業廃棄物の処理は、大きく次の4つのステップに分かれます。
- 1. 分別・保管
- 2. 収集・運搬
- 3. 中間処理
- 4. 再生処理・最終処分
中間処理では焼却、破砕、脱水、選別、無害化、安定化などがおこなわれ、最終処分では主に埋め立て処分がおこなわれます。最終処分場はその埋め立て能力によって安定型、管理型、遮断型の3種類があり、産業廃棄物の性状によって行く先は異なります。
産業廃棄物の処分は個人でも可能?
産業廃棄物とは、事業活動によって排出される廃棄物を指すため、基本的に個人名で産業廃棄物を処理場に持ち込むことはできません。また、産業廃棄物の収集運搬および処分は許可制のため、たとえ事業者であっても産業廃棄物の処分は専門業者に委託するのが基本です。なお、個人事業主として開業届を税務署に提出している、かつ産業廃棄物の収集運搬に関する許可を受けているのであれば、個人であっても産業廃棄物を処理場に持ち込むことは可能です。
解体工事における産業廃棄物処分以外の勘定科目
解体工事をおこなうと大量の産業廃棄物が出ます。解体工事のなかで発生した産業廃棄物の処分費用は「支払手数料」や「外注費」、場合によっては「売上原価」として仕訳されるケースが多いでしょう。くわえて、解体工事では産業廃棄物の処分費用以外にもさまざまな費用が発生します。たとえば、建物・付帯物の撤去であれば「固定資産除却損」、アスベストの事前調査であれば「一般管理費」などと仕訳するのが良いでしょう(※)。
※どの勘定科目で仕訳すべきかは解体工事の目的やシーンによって異なるため、一概に上記のものが正解とはいえません。
次の記事では、解体工事の際に使用する勘定科目について、相談先や節税のためのポイントに触れながら詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
関連記事:【法人向け】解体工事の勘定科目とは?相談先や節税のポイントも紹介
まとめ
本記事では、解体工事などで出た産業廃棄物処分費用の勘定科目について、目的別、シーン別に具体的な仕訳方法を解説しました。
<産業廃棄物処分費の仕訳に利用できる勘定科目6選>
繰り返しになりますが、産業廃棄物の処分費用をどの勘定科目で仕訳すべきかは、処分の目的やシーン、金額、頻度などによって異なります。顧問税理士への相談はもちろん、不明な点があれば税務署や商工会議所に相談してみるのもおすすめです。また、産業廃棄物の処分や解体工事全般についてわからないことは、許可を受けた専門の業者や解体専門会社に相談してみると良いでしょう。
東京都目黒区の株式会社上池解体興業(ボッコス/BOCCOS)では、建物の解体工事を徹底サポートしております。東京都内を中心に関東地域において「空き家・木造住宅・ビル・店舗内装」の解体工事を承っており、豊富な実績があります。本記事で取り扱った産業廃棄物についても不明点があればぜひご相談ください。当社では丁寧なヒアリングを心がけておりますので、初めての方でも安心してご利用いただけます。お見積もりは完全無料ですので、当社Webサイトに掲載の「電話・メール・LINE」からお気軽にお問い合わせください。