解体工事では「仮囲い」が必要になるケースがあります。とはいえ解体工事に馴染みがない人のなかには、「仮囲いって何?」「仮囲いの基準を守らなかったらどうなる?」などと、不安や疑問がある方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、解体工事で使用される仮囲いの基準や設置費用、トラブル例について紹介します。解体工事のプロである「株式会社上池解体興業」が初めての方にもわかりやすく情報をまとめて責任を持ってご説明しますので、参考にしてみてください。
そもそも解体工事の仮囲いとは?
仮囲いとは、建物周辺に設置されている「ガード」や、建物に覆い被されている「養生シート」などの工事現場周りに設置される囲いのことです。解体工事期間中のみ設置される囲いであるため、「仮」囲いと呼ばれます。仮囲いは、解体工事現場を周囲から隔離する目的で設置されます。
現場周辺を隔離することで、人の立ち入りを制限できるため関係者以外の侵入による想定外の事故を未然に防ぐことが可能です。また工事中に発生する粉じんの飛散も防止できるため、近隣住民からのクレームを減らす役割もあります。
このように、仮囲いは解体現場内外の安全を守るために利用されています。
仮囲いの種類
解体工事の仮囲いには、幅広い用途に対応したさまざまなものがあります。具体的には、以下のような仮囲いが利用されます。
- ・防炎シート
- ・万能鋼板(安全鋼板)
- ・ガード・ネットフェンス
- ・パネルゲート
- ・サイクルゲート
- ・アドフラットパネル
木造家屋の解体工事の場合には、仮囲い養生として建物に「防音素材の養生シート」を被せ、周囲はカラーコーンや単管バリケードで簡単に囲われる場合が一般的です。一方で高層ビルや商業施設などの大型施設の解体工事の場合には、養生シートに加え、防音性の高いフラットパネルや万能鋼板を使って、現場一帯を囲います。
また最近では、周辺環境に配慮した「アドフラットパネル」と呼ばれる仮囲いを活用する業者も増えています。アドフラットパネルとは、木目調のものやツタなどの植物を吊るせるものなど、周辺環境に馴染みやすいデザインが採用された仮囲いのことです。
複数の仮囲いを所有している業者も多いため、希望する仮囲いがある場合には一度相談してみると良いでしょう。
解体工事での仮囲いの基準
仮囲いであれば、どのような規格でも良いわけではありません。解体工事で使用する仮囲いには、法律で基準が設けられています。また建物の種類によっては、設置が不要なケースもあります。
では、「仮囲いが必要な建築物の基準と仮囲いの高さ基準」をそれぞれチェックしていきましょう。
設置が必要な建築物の基準
仮囲いの設置が必要な建築物の基準は、建築基準法施行令にて「木造で高さが13メートルもしくは軒の高さが9メートルを超える建物、または木造以外で2階以上の建物の工事」と決められています。仮囲いは「建物自体の高さ・軒高・構造と階層」の3つの基準で、設置の要否が異なります。
以下の表にて「仮囲いがいる・いらない建築物」の例をまとめたので、自分の解体ケースをチェックしておきましょう。
【必要】
- ・高層ビルやマンション
- ・RC構造の2階建てアパート
- ・病院や小学校などの大型施設
- ・省エネ設計の3階建て住宅
【不要】
- ・一般的な木造2階建て住宅
- ・平屋住宅
特に最近の省エネ設計住宅の場合には、断熱材や空調用のダクトにより厚みが増えるため、規定の13メートルよりも高いケースがあります。そのため省エネ設計住宅を解体する場合には、仮囲いが必要になることもあります。ただし一般的な2・3階建て住宅の場合は、13メートル以下で設計されているため、通常の個人宅の解体においては必須ではありません。
自分の解体ケースで必要になるか不安な場合には、解体業者に聞いてみると良いでしょう。
仮囲いの高さ基準
仮囲いの高さの基準は、「1.8メートル以上」です。そのため解体業者の多くが、「2〜4メートル」の仮囲いを使用しています。ただしイベントなどのほかの用途でも使用される仮囲いの場合には、「1.5メートル程度」のものもあります。
そのため仮囲いを使用する解体工事の際には、業者が間違って使用していないか施主側もチェックすると良いでしょう。
解体工事で仮囲いをするメリット3つ
一般住宅の場合には仮囲いは必須ではありませんが、仮囲いをすることでさまざまなメリットがあります。それでは、そのメリットを3つ紹介します。
1.安全に作業ができる
解体工事では作業員が工具を落としてしまったり、重機での解体中にコンクリート片が落ちてきたりと、危険な状況が多々あります。
そこで仮囲いをすることで工事現場周辺に人が近寄れなくなるため、工具などの落下による事故を防ぎ、近隣住民の安全を守ることができるだけでなく、業者側が安全に解体作業を進められるメリットもあります。
2.関係者以外の立ち入りを防げる
仮囲いが必要なケースで設置していない解体現場では、通行人が間違って工事中に侵入してしまい、重機との衝突事故が発生するケースもあります。また仮囲いがないと簡単に現場内に侵入できてしまうため、人がいない作業時間以外で盗難が発生する可能性も。
そこで解体現場周辺に仮囲いをすることで、関係者以外の立ち入りを防ぎ、工事中の事故や盗難トラブルのリスクを減らせるメリットがあります。
3.近所トラブルを防げる
頑丈なRC構造の建物の解体時には、大きな騒音が出ます。また解体にともないチリやホコリなどの粉じんも、大量に発生してしまいます。
そのため防音性のある仮囲いをしない解体工事では、騒音や粉じんが原因のクレームが入ってしまうことも珍しくありません。仮囲いは音や粉じんが外部へ出てしまうのを防ぎ、近所トラブルを避けるためにも重要です。
解体工事の仮囲いにかかる費用相場
解体工事の仮囲いにかかる費用相場は、「1平方メートルあたり900〜12,000円」です。以下の表にて「仮囲いの種類別の費用相場」をまとめたので、参考にしてみてください。
仮囲いの種類 | 費用相場 |
---|---|
防炎シート | 900〜4,000円/㎡ |
万能鋼板 | 1,800〜12,000円/㎡ |
フラットパネル | 3,000〜10,000円/㎡ |
アドフラットパネル | 5,900〜7,700円/㎡ |
ガードフェンス | 3,000~4,500円/㎡ |
一般的な木造2階建て住宅の場合には、防炎シートが利用されるため、仮囲い費用として「15〜25万円程度」かかります。
また仮囲いがいらない解体工事の場合に、見積もりに含まれているときは、解体業者に「どうして必要なのか」を聞いてみましょう。法律で定められている規模の解体工事でなくとも、業者が安全性のために仮囲いをするという判断をしたのであれば、従った方が良い場合もあります。
逆に、見積もりには仮囲いに関する項目が含まれていない場合でも、近所への配慮のために希望するのであれば、業者に相談してみましょう。
関連記事:家の解体費用の相場は?安く抑えるコツと知らなきゃ損する注意点も
仮囲いが基準以下の解体工事で起こりうるトラブル例
仮囲いが必要なケースにもかかわらず、設置されていない場合や取り付けが不十分な場合には、大きな事故が発生してしまいます。こちらでは、「仮囲いが基準以下の解体工事で起こりうるトラブル例」を3つ紹介します。
仮囲いの落下
仮囲いの設置が十分でない場合には、仮囲いが強風にあおられて、前面の道路上に転倒する事故が発生してしまいます。
2メートル程の大きなガードが倒れてしまうと、道が完全に塞がれて通行がスムーズにできなくなるため、クレームが入る可能性もあります。
仮囲いの落下によるトラブルを回避するためにも、台風が起こりやすい時期に解体工事を依頼する場合には、強風に対応した仮囲いを使ってもらえるか確認しておくと安心です。
損傷事故
地震の影響で地盤がゆるんだ影響で仮囲いが崩れ、隣家の外壁や車を傷つけてしまう事故例も報告されています。近隣住民のモノを破損してしまった場合には、基本的に業者が損害賠償を負うことになりますが、場合によっては施主の責任が問われるケースもあるため注意が必要です。
そのため損傷事故による想定外の出費を避けるためにも、特に隣家との距離が近い解体工事で仮囲いを設置する場合には、仮囲いの設置方法や種類を業者と相談すると良いでしょう。
人身事故
仮囲いが倒れてしまい、通行人や作業者がケガを負ってしまう事故も少なくありません。
物損事故と同じく、人身事故の場合にも基本的には業者の責任となりますが、立地条件に適切でない仮囲いを強制するといった無理な注文をした場合には、発注者側が人身事故の責任を負うケースもあるため注意しましょう。
仮囲いの基準を守らない場合の罰則
基準を満たさない仮囲いを使用した場合には、罰則が科されてしまうケースがあります。こちらでは、「仮囲いの基準を守らない業者側の罰則と施主の責任」を紹介します。
業者側の罰則
業者が仮囲いの基準を守らずに解体工事を進めた場合には、「100万円以下の罰金刑」が下されます。その理由は、建築基準法に記載されている「工事現場の危害の防止」の項目部分に違反するからです。
また仮囲いの基準を満たしていないにもかかわらず、「基準を満たした仮囲いを使用した」と虚偽の報告や届出をした場合には「30万円以下の罰金」となります。
施主側の責任が問われるケースに注意
仮囲いの基準は、施主側も守る必要があります。例えば施主が解体費用を安くするために仮囲いを拒絶した場合には、施主側の責任が問われるケースもあります。
想定外のトラブルを避けるためにも、基本的には業者の判断に任せるようにしましょう。
【仮囲い以外にも】解体工事における決まり・基準まとめ
解体工事では仮囲い以外にも、決まりや基準があります。以下の表にて、6つの項目ごとに基準をまとめました。
基準の項目 | 決まり・基準 |
業者に必要な許可・登録の基準 | ・「解体工事業登録」:500万円未満の小規模な解体工事を営む業者に必要
・「建設業許可」:500万円以上の解体工事を請け負う業者に必要 |
作業スケジュールの基準 | ・住宅地での作業禁止時間:PM7〜AM7時
・連続して解体工事ができる日数:6日 ・工事施工不可日:日曜と祝日 |
届出の基準 | ・解体工事の7日前までに「解体工事届出」を施主もしくは業者が提出
・解体完了してから1ヵ月以内に「建物滅失登記申請」を施主が提出 |
騒音・振動の基準 | ・騒音基準:85デシベル以下
・振動基準:75デシベル以下 |
廃棄物処理の基準 | ・解体工事で発生する廃棄物を収集・運搬するためには「産業廃棄物収集運搬許可証」が必要
・「建設リサイクル法」に従って分別 |
アスベスト工事の基準 | ・アスベストの除去工事前に「アスベストの含有有無を調べる「事前調査」を実施
・撤去工事の14日前に「アスベスト除去の届出」を施主もしくは業者が提出 ・吹き付けアスベストの切断等の危険な作業では、隔離養生が必要 |
例えば、解体工事届出の提出が施主に義務付けられているように、施主側が守らなければならない基準も多くあります。そのためトラブルや訴訟問題を避けるためにも、上記の基準は押さえておくと良いでしょう。
仮囲い・養生に関する悩みは解体工事のプロへ相談
仮囲い・養生がよくわからない場合には、解体工事のプロである「解体業者」に相談してみましょう。
もちろん、ハウスメーカーや工務店、不動産会社など、他業者にも仮囲いのことは相談可能です。とはいえ解体専門でない会社は所有している仮囲いの種類が少なく、柔軟に対応してもらえない可能性があります。また新築建て替えの際に工務店に解体を依頼してしまうと、下請けの解体業者とコミュニケーションを取る機会がなく、仮囲いの相談や質問ができない可能性も。
一方で解体業者は実際に仮囲いの設置を行っているため、仮囲いの疑問に対して詳細に説明できます。また相談内容を踏まえて、適切な仮囲いを提案してくれるでしょう。
そのため仮囲い関連のトラブルを避けるためには、解体業者へ直接委託することをおすすめします。
関連記事:家の解体業者の損しない選び方!トラブルを避ける方法も解説
まとめ
解体工事では「仮囲いの設置が必要な建築物と仮囲い自体の高さ」において、以下のように基準が設けられています。
仮囲いが必要な建築物の高さ基準 | 仮囲いの高さ基準 |
・高さが13メートルを超える木造住宅
・軒の高さが9メートルを超える建物 ・2階以上あるS造・RC造の建物 |
・1.8メートル以上 |
各基準を守らずに解体工事を進めた場合には、業者だけでなく施主の責任が問われるケースもあります。そのため解体業者との契約前には、業者が使う仮囲いをチェックするようにしましょう。
また解体工事の仮囲い関連のトラブルを回避するためには、解体のプロである「解体業者」への直接委託がおすすめです。
東京都目黒区の株式会社上池解体興業(BOCCOS/ボッコス)では、解体工事をフルサポートしております。東京都内を中心に関東地域において「木造家屋・アパート・店舗内装」などの解体工事を承っており、難しい解体工事の実績も豊富です。また当社では丁寧なサービス対応を心がけておりますので、初めての方でも安心してご利用いただけます。お見積もりは無料ですので、当社Webサイト上の「電話やメール」からお気軽にお問い合わせください。