最近では空き家の問題の対策として法律の制定や空き家解体のサポートとして市区町村から補助金支給が行われるようになりました。また、銀行などの金融機関では低金利、無担保の解体専用ローンが利用できるようになっており、空き家を解体したくても金銭的余裕がない、と言う方でも解体がしやすくなっています。今回は、この空き家解体の強い味方となっている解体専用ローンと補助金について解説いたします。
解体に使えるローン
現在、日本の人口減少や核家族化、地方の過疎化などに伴い空き家が増えており、社会問題化しています。両親の他界に伴い家を相続しても、他に自宅を所有していれば空き家になります。不動産として貸し出すことや売却が出来ればいいのですが、駅から離れた交通の便の悪い立地などでしたらなかなか入居者が現れず買い手が付きません。さらに、新築に近ければまだしも、築年数が古くなればそれだけ不動産価値が無くなりますので、ますます手放すことが難しくなってしまいます。
では解体して更地にすればいい、となりますがこの際には解体費用がかかってしまいますし、更地にした後に家を建てる予定が無ければ住宅ローンは組めない可能性がありますので解体して更地にしたいが金銭的な問題から解体に踏み切れずそのまま放置されているケースは多いです。
このため、住宅の解体のみのローンの需要があることから解体専用のローンが作られており、現在は様々な銀行で取り扱われています。解体専用ローンや解体に使用できるローンには以下の種類があります。
解体専用ローン
解体専用ローンは空き家解体ローンなどと言う名前でJA(農業協同組合)や、多くの地方銀行で取り扱われています。空き家は社会問題化しており、空き家のまま放置しておくと様々な問題が出てきますので、地方自治体も空き家解消に取り組んでおり、その取り組みの一環として金融機関に解体専用ローンの取り扱いを要請している場合もあります。このため、無担保でローンの金利も安く設定されていることが特徴です。もちろん、金融機関ごとに条件が異なりますので、解体専用ローンを検討の際には貸出条件を事前に調べておく必要があります。
解体専用ローンは解体前に融資を受け取ることが出来ますので、支払いもスムーズに行えます。
住宅ローン
住宅ローンは住宅建設の際に利用できるローンですが、この住宅ローンに古い家屋の解体を組み込むことで家屋解体費用込みの融資を受けることが出来ます。つまり、住宅を建築しない場合は利用することが出来ません。このため、住宅ローンは新築前提の際に利用できるローンと言えます。
住宅ローンは金利が安く、変動金利と固定金利が選べますのでその時の将来的な経済状況を見据えて変動金利か固定金利を選ぶことが出来ます。固定金利は金利が固定されますので、将来的な金利の上昇が起こっても影響を受けません。一方の変動金利は将来的に金利が変動するとその金利に連動して変動しますので、特になるのか損になるのかには運の要素が入っています。
また、新築物件が担保になりますので保証人は必要なく、借りやすいローンと言えます。また、借入金額が大きいので金利の安いローンを利用することで将来的な返済額を減らす事が出来ます。
一方で、融資を受け取るタイミングは住宅引き渡しの当日になることが一般的ですので、解体が終わり住宅の建設が終了して融資を受けるまで時間がかかり、解体業者はそれまで支払いを受けられないため受注を嫌がる業者も出てきます。
プロパーローン
プロパーローンとは金融機関が保証会社を介さずに、独自の審査で融資の可否を決定するローンです。保証なしに加えて無担保で貸し出しを行っているので、貸し倒れのリスクは銀行が負っており、金利は高めに設定されています。
保証人や担保が必要ないために借りやすいですが、その反面金利が高いので返済額が多くなってしまいますので利用の際には注意が必要です。
多くの市区町村で準備されている補助金
空き家問題が社会問題になってきてからこの問題を解決させようと、空き家解体に補助金を出す自治体も増えています。ただ、金額や条件は自治体ごとに異なっており、老朽建築物の除却と言った建築物からブロック塀等撤去と言ったブロック塀の除去まで様々です。ローンは返済義務がありますが、補助金は返済する必要がありません。
助成を受けるためには、登記がなされていること、個人が所有していること、築年数や空き家の期間などの条件を満たす必要があります。また、助成金額は解体費用の20%から50%くらいが多いです。解体をご検討の場合は市役所のホームページなどから調べてみることをお勧めいたします。
解体専用ローンと共にこの空き家解体費用の補助金を組み合わせることが出来ると空き家解体のハードルが非常に低くなります。
空き家にしておくデメリット
空き家の解体費用が勿体ないと言って空き家を放置しておくと以下のような様々なデメリットがあります。
空家等対策の推進に関する特別措置法に抵触する恐れ
空き家の増加により様々な問題が出てくるようになると、2014年に空家等対策の推進に関する特別措置法が施行されました。この法律では特定空家等に指定された場合、最終的には空き家の所有者の負担での行政代執行が可能になっており、行政が代行して解体した費用は空き家の所有者が負担しなければなりません。
さらに、特定空家等に指定されると宅用地の特例が受けられなくなり、固定資産税の軽減が無くなります。このため、税額は最大で6倍になってしまう上、行政から代執行を行われる可能性も出てきます。
もちろん、いきなり代執行になるのではなく、代執行に至るまでにはいくつかのステップがありますが、適切な管理を怠り放置したままですと行政から是正勧告を受け、従わなければ50万円の罰金が科せられますので、空き家として放置していた物件に対して市区町村が空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき情報収集を行うようになると解体を検討した方がよいでしょう。
近所からのクレームの恐れ
空き家を放置しておくと敷地内に草が生えてしまい、夏場になると草むらが出来上がります。長く伸びた草は道路や隣へと伸び出し、通行人や隣家に直接迷惑をかけるのみならず、景観も損ねてしまいます。
こうなると周辺住民からのクレームが役場へと寄せられ、行政は空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき調査を行う可能性が出てきます。
家の庭にはゴミが投げ入れられても誰も片付けないので次第にゴミが散乱した状態になりますし、ゴミと共に枯れた草が散乱していると火が付きやすくなり、火災の危険性も出てきます。また、空き家ですので不審者に侵入され、犯罪などに利用される恐れもありますので、空き家を放置することで様々なリスクを生み出していることになります。
解体にかかる費用
空き家を解体する際にかかる気になる費用をご説明いたします。費用は建物により異なり、建物の構造や広さ、立地、付帯物及び廃棄物の量などにより決まります。
関連記事:解体工事の坪単価はいくら?構造別の相場や安くするコツを紹介!
解体の坪単価
下の表が上池解体興業の建物の種類ごとの解体にかかる坪単価です。
建物の種類 | 25坪以下 | 26-35坪 | 36-50坪 | 51-100坪 |
木造 | 3万円~/坪 | 2.8万円~/坪 | 2.6万円~/坪 | 2.5万円~/坪 |
軽量鉄骨 | 4万円~/坪 | 3.8万円~/坪 | 3.75万円~/坪 | 3.5万円~/坪 |
重量鉄骨 | 4万円~/坪 | 3.8万円~/坪 | 3.8万円~/坪 | 3.8万円~/坪 |
鉄筋コンクリート | 4万円~/坪 |
木造で25坪以下ですと坪単価は最も安くて3万円ですので、構造によってはこれ以上の費用がかかる可能性もあります。また、25坪以下の軽量鉄骨の坪単価は最も安くて4万円で木造よりも1万円高くなっています。
木造と鉄筋コンクリートとでは素材が異なっており、鉄筋コンクリートの方が強固ですので解体に手間がかかります。このため、構造が複雑になり強固になればなるほど単価が高くなります。一方で、広さが広くなるほど坪当たりの壁が減りますのでその分単価が下がります。基本的にこの坪単価に面積を掛けるとこで解体費用が算出されますが、例えば木造の家をリフォームして一部鉄骨にした、など全体の構造が一致していない場合などは別途計算が必要になります。
実際に上池解体興業で手掛けた解体の事例をご紹介します。
以下の写真は約20坪の木造住宅です。こちらの解体にかかった費用は約70万円でした。工期は1週間ほどでその下の写真のように更地になっています。
解体前写真
解体後写真
関連記事:上池解体興業 住宅解体事例02
地下や立地による料金の違い
地下にある建物の解体は廃棄物の引き上げや埋め立てなどを行わなければならず手間がかかるために、解体費用は地上よりも高くなる可能性が高いです。
立地も重要で、重機が入れる広い道に面している場合は問題にならないのですが、重機が入れないような狭い道や建物の密集地、山の急斜面に面した場所に建っている建物を解体する場合には重機が使えないこともあります。このような場所では小型重機を使うか、手壊しと言い職人の手で解体を行わなければならないため、その分解体の費用は高くなります。
付帯物解体の料金
他にも、付帯物、例えば塀やアスファルト、庭木などがある場合にはこれらの解体費用も追加されます。以下の表が付帯物解体の費用単価です。一坪は約3.3㎡です。
付帯物 | 解体費用 |
ブロック塀 | 3,500円~/㎡ |
万年塀 | 3,500円~/㎡ |
コンクリート土間 | 3,000円~/㎡ |
アスファルト土間 | 2,500円~/㎡ |
ベタ基礎 | 3,000円~/㎡ |
植栽・庭木 | 2t=40,000円 |
3t=50,000円 | |
4t=60,000円 |
ブロック塀の単価は3,500円~/㎡ですので、一坪辺り約11,550円となります。他の付帯物の同様に家屋の解体より安くなっており、これはブロック塀やアスファルトが家屋に比べて容易に解体できるためです。
廃材運搬及びリサイクル費用
また、解体した後には廃材が残りますが、この廃材を運び出して処分しなければなりません。この際の費用も解体費用に含まれますので、多くの建築材を使用しているとその分廃棄の費用が高くなります。また、廃材はそのまま廃棄できるわけではなく、平成12年に制定された建設リサイクル法によりリサイクルを行わなければなりません。
これは、一定規模(80㎡)以上の建設工事の際に出たコンクリート、アスファルト、木材と言った特定建設資材を買い合い事業者が分別解体等及び再資源化等を行うことが義務付けられています。建設リサイクル法の施行以前ではまとめて廃棄されていましたが、施行以降では分別してリサイクルしているので、これにより廃材処理の費用が高くなっています。
関連記事:解体工事の産業廃棄物とは?一般ゴミとの違いや処分費用の相場を解説
解体の手順
建物の解体を行う際には一般的に以下の手順に従って行われます。
見積もりの作成
まずは解体業者の選定を行いますが、選定の前に見積もりを出してもらう必要があります。見積を出すには建物の種類や坪数の確認からアスベストなどの有害物質使用の有無、またはどのような場所に建っているか立地の確認、廃材の量及び処理方法の確認などを行い、必要な金額を算出します。
見積もり金額は解体業者によって異なりますので、一社ではなく複数の会社から出してもらうことが一般的です。
関連記事:解体工事の注意点18選!業者探し・契約後・施工中・完了後別に解説
解体作業前の準備
解体業者が決まったら、解体前の準備を行います。建物には電気、ガス、水道が繋がっている場合がほとんどですので、これらを停止し、解体するときに漏れないようにします。また、解体時には騒音が出るので、周辺住民にご挨拶をします。また、重機の搬入経路を確認すると共に解体手順も確認します。
また、解体に伴い申請も必要で、道路を使用する場合は道路使用許可を申請し、建物の面積が80㎡を超える場合は建設リサイクル法に基づく届け出をします。
解体の邪魔にならないように不用品を撤去し、足場を組み、養生を行うと共に防音パネルを設置します。
関連記事:家の解体工事に足場はいるの?種類や必要な資格・許可をプロが解説!
解体及び解体後の処理
解体時には内装を撤去し、埃が舞わないように水を掛けながら重機などを使って壁や天井、床を解体していきます。建物は養生シートで覆われていますが、この養生シートも埃の拡散を防いでくれます。付帯物も同様に解体が進められ、解体中に出た廃材は分別されて搬出されます。
解体後には更地にするために地ならしが行われると共に、最後には解体の際に汚してしまった道路の清掃が行われます。
このように多くの工程を経て解体は行われていきますので、その分費用がかかってしまいます。また、解体後に土地がすぐ売れなかった場合は現金が入ってこないため、支払いが難しくなる場合があります。このため、建物の解体を行う際には解体専用ローンの利用がよく行われています。
まとめ
最近では空き家が社会問題化しており、空き家として放置されていると近隣住民の目に留まりやすく、行政の調査対象にもなってしまいます。一方で、解体を行いたくても資金がないと言う所有者の問題もあります。そこで、解体専用ローンと地方自治体の補助金を組み合わせることで空き家の解体が行いやすくなります。
空き家を所有してお悩みの際には解体の経験が豊富な上、解体専用ローンや補助金にも詳しい東京都目黒区の上池解体興業(BOCCOS/ボッコス)へ是非ともご相談ください。