解体工事のアスベスト調査義務化はいつ?費用や罰則をプロが解説
2022年4月1日以降に実施される解体工事において、アスベスト調査の結果報告が義務化されました。
解体工事を予定されている方のなかには「調査報告の申請方法や注意点を知りたい」「調査にかかる料金負担は抑えられる?」と、興味や疑問がある方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、アスベスト調査報告義務化の詳細やポイント、調査報告の流れについて紹介します。解体工事のプロである「株式会社上池解体興業」が初めての方向けにわかりやすく責任を持ってご説明しますので、参考にしてみてください。
令和4年4月の解体工事からアスベスト調査の結果報告が義務化
令和4年4月1日以降の解体工事から、アスベストの有無に関わらず「アスベスト調査の結果報告」が義務化されました。
調査報告は、元請業者もしくは自主施工者である「解体業者等」が行います。また報告先は1ヵ所ではなく、「労働基準監督署および地方公共団体」に報告する必要があります。
そもそもアスベストとは?
「アスベスト(石綿)」とは、ケイ酸塩鉱物に含まれる天然の鉱物繊維です。
アスベストは熱や酸の影響を受けにくく、比較的丈夫な性質を持つことから、吹き付け材や保温・断熱材、屋根材など、幅広く使用されていました。また用途の多様さから、ビル内部の設備や住宅、駐車場などあらゆる建築物・工作物に活用されたのです。
しかしながら、建築物の劣化等で空気中へ飛散した場合に、人間が吸い込んでしまうと肺がんの原因となる危険な物質として指摘されました。そのため現在は使用だけでなく、製造も原則禁止されています。
【解体前にチェック】アスベスト調査報告義務化のポイント
アスベスト調査報告の内容を理解するうえで、施主が押さえておくべきポイントがあります。こちらでは、「アスベスト調査報告義務化のポイント」について以下の3つを紹介します。
- 1.報告対象ではない解体工事がある
- 2.調査には専門資格が必要
- 3.アスベスト調査用の補助金が活用できる
家屋解体を予定されている方は、事前に確認しておきましょう。
1.報告対象ではない解体工事がある
アスベストの調査報告はすべての解体工事に義務付けられたものではなく、一定規模以上の建築物等の工事に対して定められたものです。そのため、以下のように報告対象外の工事もあります。
- ・床面積の合計が80㎡未満の建築物における解体工事
- ・工作物の解体工事で、請負代金の合計金額が100万円(税込)のもの
- ・木造建築の木材部分のみに穴をあける作業
- ・壁に穴をあける等の建材に極めて軽微な損傷しか及ぼさない、もしくは破損させない作業
解体工事の対象は「床面積の合計が80㎡以上」と決められているため、小規模な建物や家の一部を解体する工事であれば調査のみで報告は不要となる場合もあります。自宅や実家の解体工事が報告対象に該当するかどうかは、自治体のホームページで確認すると良いでしょう。
2.調査には専門資格が必要
今回の法改正により、2023年10月1日以降のアスベスト調査には専門資格が必要となりました。アスベストに関する十分な知見があり、的確な判断を行える者しか事前調査を実施できなくなります。
厚生労働省によりアスベスト調査士として認められている資格は、以下の通りです。
- ・建築物石綿含有建材調査者
- ・石綿作業主任者
- ・アスベスト診断士の有資格者かつ日本アスベスト調査診断協会の登録者
- ・2023年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録されている者
解体業者のなかには法改正に対応しておらず、上記に該当しない人が調査をする可能性も考えられるため、特に適用後は注意してください。
なお施行前の段階でも、適切に調査できる「アスベスト工事専門の業者、もしくは資格取得者が在籍する解体業者」に依頼することをおすすめします。
3.アスベスト調査用の補助金が活用できる
アスベスト調査用の補助金が国や地方公共団体から提供されており、条件に当てはまる場合には活用することができます。以下の表にて「アスベスト調査に対する補助金制度」をまとめましたので、参考にしてみてください。
助成団体 | 補助内容 | 補助金額 |
厚生労働省 | 吹付け建材中のアスベスト有無を調査するために要する助成 | 25万円まで |
新宿区 | 吹付けアスベスト含有調査費用に関する助成 | 含有調査費の10/10 上限25万円 |
川崎市 | アスベスト含有吹付け材が使用されている恐れがある建築物に対する調査費用の助成 | 全額補助 1ヵ所調査であれば上限15万円 |
補助対象の建築物や金額等が自治体ごとに異なりますので、補助金・助成金を利用する時には各種ホームページの情報を確認すると良いでしょう。
アスベスト調査報告の流れ
アスベストの調査報告には業者だけでなく、施主が行う手続きも含まれます。こちらでは「アスベスト調査報告の流れ」について、以下の4つに沿って紹介します。
- 1.施主がアスベスト調査の専門家に調査依頼
- 2.解体工事前に業者がアスベスト調査を実施
- 3.業者が各種自治体等へアスベスト調査結果を報告
- 4.業者がアスベスト調査結果を掲示する
施主が行うこともあるため、解体前には必ず確認しておきましょう。
1.施主がアスベスト調査の専門家に調査依頼
家の解体工事に伴いアスベスト有無の調査が必要になった場合には、まず施主が「アスベストの専門家に調査を依頼」しなければなりません。
依頼する際には直接アスベスト工事専門業者に問い合わせても良いですが、解体業者に相談することで信頼性の高い専門家を紹介してもらえる場合も。いずれの依頼方法にしても、有資格者であることを確認してから頼むようにしましょう。
2.解体工事前に業者がアスベスト調査を実施
解体工事着工前には、依頼を受けた業者による「アスベスト調査が実施」されます。事前調査は、図面等の情報に基づく「書面調査」と、現地での「目視調査」による二重チェックです。
そして現地で検体のサンプリングが行われたあと、X線回析分析法等でアスベストの調査が行われます。アスベスト調査に必要な「定性・定量分析」は、すぐ結果が出るものではなく「2〜3週間程度」かかりますので、ほかのスケジュールとの兼ね合いに注意してください。
3.業者が自治体等へアスベスト調査結果を報告
調査後は、調査内容をもとに業者が報告書を作成し「労働基準監督署と地方公共団体に提出」しなければなりません。報告書の作成から提出までは、電子システムの「石綿事前調査結果報告システム」が用いられます。
また施主に対しても、書面での報告が義務付けられています。アスベストが一切なかった場合には報告のみで終了ですが、確認された場合にはその後の対応について話し合わなければなりません。
4.業者がアスベスト調査結果を掲示する
アスベストの調査結果に関する報告書は作成して終わりではなく、解体工事を進める前に報告書の写しを現場にて掲示する必要があります。業者が工事現場の見やすい場所に備え付けます。
アスベスト除去作業の流れ
事前調査の結果、アスベストが確認された場合には法令に基づいて石綿飛散防止措置、および除去作業を実施しなければなりません。こちらでは「アスベスト除去作業の流れ」について以下の3つに沿って紹介します。
- 1.アスベスト除去に関連する書類提出
- 2.アスベスト除去作業
- 3.作業完了報告
施主にも関係する工程があるため、今のうちに確認しておきましょう。
1.アスベスト除去に関連する書類提出
アスベストの含有が事前調査により確認され除去が必要になった場合には、まず初めに「アスベスト除去に関連する書類提出」を業者が行います。吹付けアスベスト除去工事に必要な届出は以下の通りです。
書類名 | 提出概要 | 提出先 | 提出期限 |
工事計画届 | 耐火・準耐火建築物の吹付けアスベストを除去する場合に提出 | 労働基準監督署 | 除去工事開始の14日前まで |
建築物解体等作業届 | アスベスト含有温材や、アスベスト含有熱材の解体などを除去する作業の前に提出 | 労働基準監督署 | 工事開始日まで |
建設リサイクル法に基づく事前届出 | 特定建設資材への付着した吹付け石綿等の有無や除去等 の措置を届出に記載 | 都道府県知事等 | 除去工事開始の7日前まで |
特定粉じん排出等作業実施届 | 吹付けアスベスト・アスベスト含有断熱材・アスベスト含有耐火覆材などの建材を除去する場合に提出 | 都道府県知事等 | 除去工事開始の14日前まで |
参照:「石綿を含有する建築物の解体等に係る届出について」|厚生労働省・国土交通省・環境省
特に「特定粉じん排出等作業実施届」は、施主が届け出を行わなければならない場合もありますので、期限や提出先を事前に確認しておくと良いでしょう。
2.アスベスト除去作業
各種届出が正常に受理されたあとは、いよいよ業者による「アスベストの除去作業」が開始されます。一般的に除去作業は、以下の手順で行われます。
- 1.処理場所や更衣室などの隔離
- 2.アスベスト飛散を防ぐ「負圧・除塵装置」の設置
- 3.薬液による湿潤化
- 4.専用器具によりアスベストを取り除く
- 5.目視による除去完了チェック
- 6.除去面に粉じん飛散防止処理剤を散布
- 7.清掃や隔離シートの撤去
また除去作業後のアスベストは「特別管理産業廃棄物」として、業者により処分されます。
3.作業完了報告
最後に、業者から施主へ書面にて作業完了報告が行われます。報告書類には取り残しがないことや、届出の計画通り作業が実施されたかなど、除去作業の具体的な内容が記載されています。
また報告書等のアスベストに関する記録は、 「工事終了日から3年間」保存する義務があります。施主には保存義務はありませんが、正常に除去された建築物である証明として保管しておくと良いでしょう。
解体業者がアスベスト調査報告を怠った場合の罰則と施主の責任
アスベスト調査報告に関連する罰則が、業者側と施主それぞれに対して設けられています。こちらでは「解体業者がアスベスト調査報告を怠った場合の罰則と、施主の責任」について紹介します。
「知らなかった」では済まされませんので、しっかりと確認しておきましょう。
業者がアスベスト調査報告を怠った場合の罰則
業者がアスベスト調査の報告を怠った場合や、虚偽の届出をした場合には、「30万円以下の罰金」が科せられます。
なお調査報告の罰則規定は、今回の法改正により新設された直接罰です。
施主の責任が問われる場合も
アスベストの事前調査に不備があり、必要な書類が未届けとなった場合には、届出義務者に含まれる施主の責任が問われる可能性もあるため注意してください。
また事前調査と除去作業それぞれにおいて、以下の義務が施主に課されています。
- ・設計図書の提供等の事前調査に協力すること
- ・施工方法や工期、工事費など、施工者に対する作業基準の遵守を妨げる条件を求めないこと
基本的には業者の計画や作業を妨げないように、協力すれば責任を問われることはありません。
なお罰則等の法律は今後も変更になる可能性がありますので、調査依頼前には厚生労働省等のホームページを必ず確認してください。
アスベスト調査報告義務化で解体業者選びがますます重要に
これまで解説してきたように、アスベストの事前調査および除去作業は非常に複雑です。故意でなくとも調査報告を怠ったと認められた場合には、施主側の責任を問われる可能性も。アスベスト調査に関する罰則を避けるうえで、解体業者選びがますます重要となります。
特にアスベストの調査から解体工事まで一貫して依頼したい場合には、「自主施工を行う解体業者」を探しましょう。下請けが存在する業者の場合には、下請け先とコミュニケーションをうまく取ることができず、トラブルが発生する可能性もあるため注意してください。
なお解体業者を選ぶ際のポイントは、こちらも参考にしてください。
「家の解体業者の損しない選び方!トラブルを避ける方法も解説」
まとめ
2020年6月に大気汚染防止法が改正され、「解体工事前のアスベスト調査報告が義務化」されました。事前調査方法や罰則対象の拡大、調査作業の記録・保存など、報告の義務付けにともない、新しく創設された規定も多くあります。
またアスベスト調査から解体工事まで一貫して依頼したい方は、「不動産業者やリフォーム会社」など解体のプロではない業者に依頼するのではなく、解体に関する豊富な知識と経験を有する「解体業者」がおすすめです。
東京都目黒区の株式会社上池解体興業(BOCCOS/ボッコス)では、解体工事をフルサポートしております。東京都内を中心に関東地域において木造一戸建て住宅等の解体工事を承っており、難しい解体工事の実績も豊富です。また当社では丁寧なヒアリングを心掛けておりますので、初めての方でも安心してご利用いただけます。お見積もりは無料ですので、「電話・メール・LINE」からお気軽にお問い合わせください。
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