建て替えを検討中の方にとって、解体費用はどのくらいかかるのか気になるところです。解体費用には一般的に坪単価✕広さ(坪数)による相場が存在しますが、工夫次第では解体費用を安く抑えることもできます。
そこで本記事では、建て替えの主な流れから解体費用の相場、費用を左右する要因、費用を安く抑えるコツまで解体工事のプロフェッショナルである株式会社上池解体興業(ボッコス/BOCCOS)がわかりやすく解説します。建て替えを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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住宅を建て替える際の主な流れ
住宅建て替えには、準備から解体、そして新築施工と多くの段階があります。建て替えの主な流れを以下にまとめてみました。
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各工程にかかる期間
建て替えには、トータルで約1年ほどかかるのが一般的です。業者選びや資金計画など、工事前の準備だけでも4〜5か月はみておきたいものです。解体工事は2週間〜1か月、新築工事と引っ越しの完了までには5〜6か月ほど。これがおよその目安となります。
ただ、この期間は状況次第で変わります。スムーズに準備が進むかどうか、業者の工程管理の仕方など、さまざまな要因が絡んでくるのです。それに、解体工事や新築工事は天候にも影響されるため、梅雨の期間や冬場は工期が伸びることもあります。
建て替えは長丁場になるので、ゆとりを持った計画を立てるのがポイントです。時間に余裕があれば、じっくりと検討や準備ができます。マイホーム建て替えは一生に一度の大きな買い物。焦らずに、一歩一歩進んでいくことが大切です。
解体費用の相場
建物の種類 | 坪単価 | 30坪 | 40坪 | 50坪 |
木造 | 30,000〜50,000円 | 約90~150万円 | 約120〜200万円 | 約150~250万円 |
鉄骨造 | 50,000~70,000円 | 約150~210万円 | 約200~280万円 | 約250~350万円 |
RC造 | 60,000~80,000円 | 約180~240万円 | 約240~320万円 | 約300~400万円 |
解体費用の相場は上記の通りです。一般的な30坪程度の2階建て木造住宅であれば、解体工事に約150万円程度かかるでしょう。
関連記事:家の解体費用の相場は?安く抑えるコツと知らなきゃ損する注意点も
なお、これらの坪単価を基準にした解体費用はあくまで目安であり、本来解体費用は坪単価と広さ(坪数)だけで単純に計算できるものではありません。そこで、解体工事を行うにあたって実際にどの項目にどの程度の費用がかかるのか、いわゆる解体費用の内訳を以下で紹介します。
解体費用の内訳
解体工事にかかる主な費用は以下の通りです。
※上記費目は解体業者が提示する見積もり上の費目と完全に一致するものではありません。どのような費目を使用するかは業者によって異なります。
1. 家屋調査費
家屋調査費は、解体工事前に周辺建物や敷地の状況を調査するために必要な費用です。外壁や屋根の状態、亀裂の有無などを確認し、地盤の状態や不同沈下の有無も調べます。写真撮影や図面作成を行い、調査結果は記録に残します。家屋調査の目的は、解体工事による近隣トラブルの防止と工事の安全性向上です。
調査費用の相場は、一般的に3万円〜10万円程度です(※建物の規模や調査内容によって異なります)。
関連記事:解体工事前の近隣家屋調査とは?調査項目や費用、流れを教えます
2. 仮設工事費
仮設工事費は、解体工事を行うために必要な仮設設備の設置・撤去にかかる費用です。高所作業を行うための足場の設置や、飛沫防止・落下防止のための養生シート(ネット)設置などが含まれます。
仮設工事費の相場は、一般的に工事費全体の2〜5%程度が目安とされています。
3. 重機運搬費(重機回送費)
重機運搬費(重機回送費)は、解体工事で使用される重機を工事現場まで運搬するための費用です。運搬距離や重機の大きさによって異なりますが、一般的には3〜5万円程度が相場です。
4. 建物解体費
建物解体費は、建物を解体するのに必要な費用そのものを指します。構造解体、内装解体、建具解体、屋根解体、重機解体、基礎撤去などにかかる費用を合わせたものです。建物解体費は解体工事全体の費用のうち、もっとも大きな割合を占めます。
5. 廃棄物処理費
廃棄物処理費は、解体工事で発生した廃棄物を処理するのにかかる費用です。廃棄物の種類や量、処理方法によって異なりますが、一般的には1㎥あたり数千円〜数万円程度が相場です。解体工事では大量の廃棄物が出るため、廃棄物処理費用の割合も大きくなります。
6. 家屋以外の解体費用・撤去費用
家屋以外の解体費用・撤去費用は、家屋本体以外の塀、擁壁、庭木、カーポートなど外構の解体・撤去にかかる費用です。「外構解体費」「付帯工事費」などとも呼ばれます
以下は家屋以外の解体費用の例です。
ブロック塀 | 1mあたり2,000円~3,000円 |
擁壁 | 1mあたり3,000円~5,000円 |
庭木 | 1本あたり1,000円~5,000円 |
カーポート | 1台あたり5万円~10万円 |
ただし、これらはあくまで目安であり、実際の費用は対象物の種類や大きさ、状態、立地条件によって異なります。
7. 整地費用
整地費用は、解体後のがれきや土砂を撤去し、更地状態にするために必要な費用です。「更地仕上げ費用」などと呼ばれることもあります。重機を使って、がれきや土砂を平らにならしたり、地盤を固めたり(転圧)します。
整地費用の相場は、敷地の広さや状態によって異なりますが、一般的には1坪あたり3,000円〜5,000円程度が目安です。たとえば、50坪の敷地の整地には約15万円〜25万円程度の費用がかかります。
8. 建物滅失登記費用
建物滅失登記費用は、解体された建物を法務局の登記簿から抹消するために必要な費用です。土地家屋調査士に依頼した場合、5万円程度が相場です。
建物滅失登記は、建物を解体後1か月以内に申請する必要があり、申請しないと固定資産税や都市計画税などの課税対象となる場合があるので注意しましょう。自分で申請することもできますが、書類の作成や手続きが複雑なため、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
なお、次の記事では滅失登記の詳細や自分で手続きする方法を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:滅失登記手続きの費用相場は?自分で手続きして費用を安く抑える方法まで解説
9. 諸経費
解体工事には、上記以外にもさまざまな経費がかかります。これらを総称して諸経費と呼び、現場管理費、書類作成費、近隣対策費などが含まれます。
関連記事:家の解体工事前の挨拶に粗品は必要?失敗しない7つの品物を紹介!
以上が、解体費用の主な内訳です。解体解体業者が提示する見積もりに記載される費目と上記費目が必ずしも一致するわけではありませんが、「どの部分にどの程度の費用がかかるのか」詳細をしっかりと提示する業者を選ぶことで、追加請求などのトラブルを避けることができます。
解体費用を左右する要因
解体費用についてインターネットで調べると、前章でも紹介した坪単価を基にした概算の方法が主に紹介されていますが、実際の解体費用は建物の条件によって大きく変動します。
本章では、解体費用に影響を与えるいくつかの要因を見ていきましょう。建物の解体費用を把握する上で役立つはずです。ただし、正確な金額を知るには、解体業者に実際に見積もりを取ってもらうのが一番確実な方法です。
建物の構造
建物の構造は解体費用に大きな影響を与えます。木造、鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨造では、解体の手間や廃棄物の処理方法が異なるため、費用も異なります。一般的に、木造がもっとも安く、RC造がもっとも高くなるでしょう。
また、同じ構造の建物でも、階数によって費用は異なります。たとえば、同じ面積の木造住宅でも、平屋と2階建て、3階建てでは解体の難易度が変わります。一般的に、階数が多いほど足場の設置や高所での作業が必要になるため、費用も高くなるのです。
解体費用を正確に把握するには、建物の構造だけでなく、階数や屋根の形状、間取りなども考慮すべきです。解体業者に現地調査を依頼し、適切な見積もりを出してもらうことをおすすめします。
建物の周辺環境
建物の周りの環境も、解体費用に影響します。たとえば、隣接する建物がない郊外の住宅と、都心の住宅密集地では、解体工事の難しさが大きく異なります。
住宅密集地の場合、隣家への騒音や振動、粉塵などの影響を最小限に抑えなければなりません。そのため、慎重な工事が求められます。また、狭い敷地内で重機を操作するのが難しいため、人力での作業が増えることもあるでしょう。こうした理由から、解体費用は高くなる傾向にあります。
アスベストなどの有害物質の有無
建物にアスベストなどの有害物質が含まれている場合、解体費用は大幅に高くなります。アスベストの処理には、専門の資格を持つ業者が必要です。また、飛散防止のための養生や、特殊な装備を使った作業が求められるため、通常の解体よりも時間と手間がかかります。そのため、アスベストの処理費用は高額になる傾向にあります。
関連記事:アスベストの解体費用相場は?場所別の目安や安くするコツも紹介
建物の築年数や建材の種類から、アスベストの使用が疑われる場合は、早めに調査を依頼し、費用の見積もりを取ることをおすすめします。アスベストの有無は、解体費用を大きく左右する重要な要因の一つです。
関連記事:【画像あり】アスベストを見分ける7つの方法と注意点を深掘り解説
解体業者の選定
解体費用は、依頼する業者によっても大きく異なることがあります。同じ建物の解体でも、数十万円の差が出ることもあります。この差は、業者の経験や技術力、人件費、諸経費などによるものです。
建て替えの場合、解体工事についてもハウスメーカーにお任せするケースが多いでしょう。しかし通常、解体専門業者に直接依頼する方が中間マージンがない分、費用を抑えられます。ハウスメーカーに建て替えを依頼する場合、解体工事は下請け業者が行うことになるため、中間マージンが発生し、費用が高くなるのが一般的です。
建て替え時の解体費用を安く抑えるコツ
建て替えの際、解体費用は大きな負担となることがあります。とくに建て替えにおける解体費用については住宅ローンに組み込むことができないケースも多々あり、そのような場合は原則として現金での支払いが必要になるため、できる限り解体費用を安く抑えたいと思うのは当然でしょう。そこで、本章では建て替え時の解体費用を安く抑えるためのコツを3つお伝えします。
助成金や補助金を活用する
自治体によっては、住宅の建て替え時に利用できる補助金制度および助成金制度を用意しています。たとえば、埼玉県さいたま市では「建替え工事助成制度」として主に耐震補強を目的として、戸建住宅の建て替えに対して1棟60万円を限度として助成金を交付しています(※)。
参考:さいたま市/【令和6年度】耐震補強等助成事業(戸建住宅の建替え工事)
また、東京都練馬区では、防災まちづくり事業実施地区内の旧耐震住宅の建て替えに対し最大225万円の助成金を交付しています(※)。
※助成金の交付にはそのほかにもさまざまな条件があります。
さらに、自治体によってはアスベスト除去に対する補助金(助成金)制度も用意しています。アスベストが含まれる建物の解体費用や補助金制度については、次の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
関連記事:アスベスト解体工事の補助金まとめ | 申請窓口や支給要件も解説
解体工事を分離発注する
建て替えにおける解体工事は、新たな住宅を建てるハウスメーカーにまとめて発注するのが一般的です。しかし、ハウスメーカーは解体工事の専門家ではなく、結局下請け業者に依頼することが大半のため、中間マージンの分、費用が高くなるのがデメリットになってきます。そこで、解体費用を抑えるためにおすすめなのが、解体工事の「分離発注」です。
解体工事をハウスメーカーにお任せするのではなく、施主が解体専門の業者に工事を直接依頼します。すると解体業者は中間マージンを支払う必要がない直接依頼ということで、価格を最大限に抑えた見積もりを提示できます。場合によっては20〜30%ほどの差がつくこともあるでしょう。
なお、一般的に分離発注は工程管理の複雑化などの問題から専門知識がないとハードルが高いのですが、建て替え時の解体工事はそのほかの工事に与える影響が少ないため、比較的分離発注しやすい点もポイントです。
関連記事:分離発注のメリットや具体例を紹介!解体工事を分離発注すべき理由も解説
複数の業者から見積もりを取り、比較検討する
解体工事を分離発注する場合、どの解体業者に依頼すべきか迷います。せっかく分離発注するのだから、なるべく安く解体工事を行ってくれる業者に決めたいものです。となると複数の業者から見積もりを取り、比較検討するのが一般的な流れではないしょうか。しかし、相見積もりには注意点があります。とくに見積もり一括比較サイトを利用する場合は次の点に注意しましょう。
相見積もりを取る際に注意すべきこと
複数の会社に見積もりを取る際に一括比較サイトの利用を考える方も多いと思います。一括比較サイトは一度の情報入力で数十社に見積もりを依頼できるという手軽さがあるものの、業者側は比較サイトに手数料を支払わなくてはならないため、直接お問い合わせがあった方よりも少々高い見積もりを提示せざるを得ないという事情があります。また、一括比較サイトに登録して見積もりを依頼したら、数分後から営業電話が鳴りやまなくなり煩わしかったなどという経験談もよく耳にするところです。 「多少費用が割高になっても良いから、多くの会社を比較して検討したい」という場合であれば、一括比較サイトの利用にもメリットはありますが、費用を抑えたいという目的であれば、一括比較サイトで貰ったお見積書を手に、ほかの解体工事業者へ直接見積もりを依頼するのがもっともおすすめです。 |
まとめ
本記事では、住宅建て替えの主な流れから解体費用の相場、費用を左右する要因、そして費用を安く抑えるコツまで解説しました。建て替え時の解体費用は、さまざまな要因によって大きく変動します。建物の構造や周辺環境、アスベストの有無、解体業者の選定など、費用に影響を与える要素を理解することが大切です。そして、解体費用を安く抑えたい場合には、助成金や補助金の活用、解体工事の分離発注、複数業者からの見積もり比較などの工夫を検討することをおすすめします。
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