解体工事に必要なマニフェストとは?施主が確認すべき項目も解説
解体工事を行う際、適切な産業廃棄物の処理が欠かせません。不法投棄などの違法行為を防ぐため、1998年12月からすべての産業廃棄物にマニフェスト(産業廃棄物管理票)の使用が義務化されました。事業者だけでなく施主にとっても、マニフェストは解体工事の適正な履行を確認するための重要な書類です。
本記事では、マニフェストの具体的な役割や流れ、施主が確認すべき項目、信頼できる業者を探すコツなどを、解体工事のプロフェッショナルである「株式会社上池解体興業(ボッコス/BOCCOS)」が詳しく解説します。
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解体工事におけるマニフェストとは
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、排出事業者(解体工事業者)が産業廃棄物の処理を委託する際に交付が義務付けられている管理票です。廃棄物がどのように収集・運搬・処分されたかを関係者間で共有・確認するためのものです。適正処理の確保とともに、不法投棄の防止に重要な役割を果たしています。
マニフェスト制度の対象
マニフェスト制度は、産業廃棄物の処理を排出事業者(解体業者)がほかの事業者に委託する場合に適用されます。したがって、一般廃棄物の処理委託や自ら処理する場合には、マニフェストの交付は不要です。ただし、排出事業者が代表者を同じくする別会社に処理を委託する場合であっても、他事業者への委託とみなされるため、マニフェストの交付が必要です。
一方、廃棄物処理法施行規則第8条の19に定められている特定のケースについては、例外的にマニフェストの交付が不要とされています。具体的には、市町村や都道府県への処理委託、港湾管理者等への廃油処理委託、再生利用を目的とする産業廃棄物(専ら物)の処理委託などが該当します。また、環境大臣や都道府県知事の認定を受けた再生利用事業者への処理委託、運搬用パイプラインを用いた処理委託、産業廃棄物の輸出に係る運搬委託なども、マニフェストの交付が不要なケースです。
このように、マニフェスト制度の対象は産業廃棄物の処理を他事業者に委託する場合が原則ですが、法令で定められた一定の例外ケースにおいては、マニフェストの交付が免除される仕組みとなっています。排出事業者は、これらの適用関係を理解したうえで、適切にマニフェストを交付していく必要があるでしょう。
マニフェストの運用手順
マニフェストは基本的に、A票~E票の7枚綴りで構成されています。各票の役割は以下の通りです。
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排出事業者は、廃棄物の種類や数量などの必要事項を記入したマニフェストのA票を保管し、B1票からE票を収集運搬業者に渡します。収集運搬業者はB2票を排出事業者に返送し、B1票を保管、C1票からE票を処分業者に渡します。処分業者はC1票を保管し、C2票とD票をそれぞれ収集運搬業者と排出事業者に返送。最終処分後、処分業者はE票を排出事業者に返送します。
最終的に各事業者が手にするマニフェストは次の通りです。なお、各事業者は最低5年間マニフェストを保管しなければならないと法律で定められています。
排出事業者 | 収集運搬業者 | 処分業者 |
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マニフェスト制度違反のペナルティ
マニフェスト制度に関する義務違反には、措置命令や罰則が定められています。マニフェストの不交付、虚偽記載、報告義務違反、保存義務違反などを行った排出事業者および処理業者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の刑事処分の対象となります。
さらに、不適正処理が行われた場合、都道府県から廃棄物処理法第19条の5第1項に基づく措置命令(不法投棄された廃棄物の除去等を講じる命令)を受ける可能性もあるのです。この措置命令に従わない場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこの併科(第25条第5号)に処せられます。
以下の表は、マニフェストに関連する主な違反行為と、それに対する措置命令・罰則の内容をまとめたものです。
違反行為 | 措置命令・罰則 | 具体的な罰則内容 |
マニフェストの不交付、虚偽記載(排出事業者) | 第27条の2第1号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
マニフェスト写しの不送付、虚偽記載(運搬受託者) | 第27条の2第2号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
マニフェストの不回付(運搬受託者) | 第27条の2第3号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
マニフェスト写しの不送付、虚偽記載 (処分受託者) | 第27条の2第4号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
マニフェスト(写し)の不保存 (排出事業者、運搬受託者、処分受託者) | 第27条の2第5号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
受託していない廃棄物についてのマニフェスト虚偽交付 (収集運搬業者、処分業者) | 第27条の2第6号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
マニフェスト未交付の廃棄物引き渡し (運搬受託者、処分受託者) | 第27条の2第7号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
処理・処分未了でのマニフェスト送付・報告 (運搬受託者、処分受託者) | 第27条の2第8号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
情報処理センターへの虚偽登録 (電子マニフェスト使用事業者) | 第27条の2第9号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
情報処理センターへの報告義務違反 (運搬受託者、処分受託者) | 第27条の2第10号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
マニフェスト制度違反に係る勧告措置命令違反 | 第27条の2第11号 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
マニフェスト確認義務違反(排出事業者) | 措置命令 | 措置命令(廃棄物処理法第19条の5第1項) 措置命令違反:5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこの併科(第25条第5号) |
無許可の産業廃棄物収集運搬・処分 | 第25条第1項第1号 | 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこの併科 |
無許可の特別管理産業廃棄物収集運搬・処分 | 第25条第1項第1号 | 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこの併科 |
不法投棄 | 第25条第1項第14号 | 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこの併科 法人の場合は3億円以下の罰金刑(第32条第1項第1号) |
不法焼却 | 第25条第1項第15号 | 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこの併科 未遂罪も罰する(第25条第2項) 法人の場合は3億円以下の罰金刑(第32条第1項第1号) |
※表中の条文番号は廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の該当条項を示しています。
参考:日本産業廃棄物処理振興センターホームページ「措置命令と罰則」
参考:廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | e-Gov法令検索
この表からわかるように、マニフェスト制度に関する違反だけでなく、無許可の産業廃棄物処理や不法投棄・不法焼却などの違反行為に対しても、重い罰則が定められています。とくに不法投棄や不法焼却については、個人に対する懲役・罰金刑に加えて、法人に対する罰金刑も定められており、違反行為の抑止と適正処理の推進が図られています。
排出事業者や処理業者は、これらの罰則規定を十分に理解したうえで、廃棄物処理法およびマニフェスト制度を遵守し、適正な廃棄物処理に努めなければいけません。
紙マニフェストと電子マニフェストの違い
紙マニフェストのほか、2020年4月1日からは、前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者(特管多量排出事業者)に対し、当該事業場から特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する場合に電子マニフェストの使用が義務付けられています。
電子マニフェストは、情報処理センター(JWNET)を介して、排出事業者・収集運搬業者・処分業者がオンラインでやりとりを行う仕組みのことです。紙マニフェストに比べ、入力の手間や保管スペースの削減、情報の透明性の向上などのメリットがあります。なお、特管多量排出事業者以外の事業者には引き続き紙マニフェストの使用が認められています。
出典:日本産業廃棄物処理振興センターホームページ「マニフェスト制度の目的」
マニフェストの電子化率は80%を突破
産業廃棄物の適正処理を確保するための重要なツールである電子マニフェストの普及が着実に進んでいます。2023年度の電子マニフェスト登録件数は4,061万件に達し、年間総マニフェスト数を5,000万件として算出した電子化率は81.8%に上りました。これは前年度の77%から大きく上昇し、ついに80%の大台を突破した数字です。
電子マニフェストの普及は、2018年6月に閣議決定された第四次循環型社会形成推進基本計画において、2022年度の電子マニフェスト普及率を70%にするという目標が掲げられたことが大きな推進力となりました。この目標は2021年12月の時点で達成され、その後も環境省の「電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップ」に基づく各種施策の実施により、着実に電子化が進んできました。
電子マニフェストの利用割合が50%に達したのは2017年9月のことでしたが、その後わずか6年足らずで80%を超えるまでに普及が進んだことになります。排出事業者や処理業者の皆様の電子マニフェスト利用への理解が進むとともに、行政機関による利用促進、システムの改善など、関係者の継続的な努力の成果といえるでしょう。
電子マニフェストの普及は、廃棄物処理の透明性を高め、不適正処理の防止に寄与するだけでなく、大量の電子データの蓄積により、廃棄物の排出状況や処理ルートの可視化、静脈産業のビッグデータ活用など、新たな可能性も広がっています。今後も電子マニフェストの一層の普及と情報の有効活用が期待されます。
出典:日本産業廃棄物処理振興センターホームページ「登録件数・電子化率」
施主がマニフェストを確認すべき理由
マニフェストの交付・管理は排出事業者の責任ですが、トラブル防止のため、施主も最終処分終了まで確認することが重要です。悪質な業者のなかには、マニフェストを適切に扱わず、不法投棄を行うケースがあるためです。万一、施主の建物から出た廃棄物が不法投棄された場合、撤去・処理責任を問われるリスクもあります。適正処理を確認し、証拠を残すためにも、施主がマニフェストE票(最終処分終了報告)の控え(コピー)をもらうことが望ましいでしょう。
控えを受け取ったら、廃棄物の品目や数量、業者名・住所などに誤りがないか確認します。もし不自然な点があれば、委託業者に問い合わせましょう。
信頼できる業者探しに役立つのが電子マニフェスト加入者検索
産業廃棄物の処理を委託する際、信頼できる業者を見つけることは排出事業者にとって重要な課題です。その際に役立つのが、電子マニフェストシステム(JWNET)の加入者検索機能です。
JWNETには、2024年5月27日現在、排出事業者253,519社、収集運搬業者28,614社、処分業者10,189社の合計292,322社が加入しています。このうち、排出事業者35,365社、収集運搬業者20,712社、処分業者8,308社の合計64,385社が、加入者情報の公開を承諾しており、JWNETの加入者検索機能で検索できます。
出典:日本産業廃棄物処理振興センターホームページ「加入者検索」
加入者検索機能では、排出事業者、収集運搬業者、処分業者ごとに検索が可能で、事業者名や所在地などの条件を指定して検索できます。検索結果には、事業者の連絡先や許可番号、取り扱う廃棄物の種類などの情報が表示されるため、適切な委託先を選定する際の参考になるでしょう。
また、JWNETのホームページでは、都道府県別の加入者数も公表されています。地域ごとの加入状況を把握することで、より効率的に委託先を探すことが可能です。
まとめ
解体工事で発生する産業廃棄物を適正に処理するため、マニフェスト(産業廃棄物管理票)は重要な役割を果たします。排出事業者による交付・管理が義務付けられていますが、施主もマニフェストを確認し、不適切な扱いをする業者に注意を払う必要があります。
最終処分終了までマニフェストの返送を確実にしてもらい、控えを受け取ることで、廃棄物の適正処理を担保しましょう。JWNETの加入者検索機能などを利用して信頼できる優良業者を選定することも、トラブルを防ぐ鍵の一つです。
東京都目黒区の株式会社上池解体興業(ボッコス/BOCCOS)では、建物の解体工事を徹底サポートしております。東京都内を中心に関東地域において「空き家・木造住宅・ビル・店舗内装」の解体工事を承っており、豊富な実績があります。解体工事で発生した廃棄物の処理についても不明点があればぜひご相談ください。当社では丁寧なヒアリングを心がけておりますので、初めての方でも安心してご利用いただけます。お見積もりは完全無料ですので、当社Webサイトに掲載の「電話・メール・LINE」からお気軽にお問い合わせください。
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